ブライダルインナーへの驚きと期待

「結婚しても素敵でいるためにはどうしたらいいのか」について考えながら、うまく考えられずにウンウンうなっていると、息子が部屋に入ってきて、「どしたのよ」と、尋ねる。
そこで私は答えたのだ。
「あのさあ、『結婚しても素敵でいるにはどうしたらいいのか』っていう相談を受けたのだけどさ、うまく答えられないのだよね。だって、どうしたらいいのか、ママにはわかんないのだもん」
すると、わが息子は事もなげにこう言うのだ。「簡単じゃない。一緒に住まなきゃいいのだよ。生活を共にしながら素敵でいるなんてこと無い。結婚して素敵になったと言われたいでしょ」
「何、それ。どういうことよ」
動転しながら、私は尋ねた。
まだ十代半ばの息子がこんなに簡単に解答してくるなんて、夢にも思っていなかったからだ。
そんな母の(つまりは私の)動転を無視したまま、彼は続けた。「夫婦はさ、別々に住んで、たまに会えばいいわけよ。会いたいときに会って、会う必要がないときは会わない」
「でも、それじゃあ、結婚していてもしてなくても同じじゃないのさ」
「バッカだな。結婚という約束をしているってとこが大事なのじゃない。別々に住んでいるのだからさ、物理的に拘束することはできないわけよ。相手がいつどこで何をしているのかわかんないのだもん。けど、結婚しているってことが、それだけが精神的な拘束になって、関係を保つ。そこがカツコいのじゃないか」
「でも、それって、同居していたって、可能なことなのじゃないの。そもそも夫婦だからって、一日中、一緒にいるわけじゃないしさ」
「違うね。考えてみてよ。生活を共にしながら素敵でいるなんてこと、所詮は無理でしょ」
「それって、トイレしたり、オナラしたりするのを見せ合いながら暮らしていたら、素敵でいるのは無理ってこと?」
「きったねえなあ。でも、まあ、そういうことだね。同居結婚に素敵さを求めるのは、無理。やるなら別居結婚。これにつきると、俺は思うけど。お母さんもトライしてみれば」
「げっ」と驚く私を「ほんじゃね」と置き去りにして、息子はどこかに行ってしまった。

もっとも、部屋を出て行くとき、捨て台詞を残しはしたが。彼はこう言ったのだ。
「もっともさ、俺は結婚したら相手をめいっぱい拘束してやるけどね。それでもいいっていう人としか結婚する気ないけど」
なんだ、それ。

まったく男というものは、何を考えているのやら。たとえ息子であっても、油断ならん。
私はびっくりしつつも、認識を新たにしたのであった。よくよく考えてみると、息子の言う通り、別居結婚してうまくいっているカップルもいる。
私の知り合いのある男性は、「僕らはさあ、単身赴任していたときだったのだよね」と振り返る。週末だけしか会えないから、そのぶん、新鮮で、話もはずみ、喧嘩もしなかったというのだ。
それなのに、ようやく単身赴任が終わって、一緒に住めるようになったとたん、皮肉なことに二人の聞は冷ややかになってしまったのだそうだ。

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